江戸時代の庶民の旅行は伊勢参りのような参詣を目的としたものであり、元禄期に旅は大衆化したとされている。それにともない、諸国の名所・里程・駄賃等を記した「道中記」と呼ばれる旅行案内書が生まれることとなった。道中記はその用途に応じて様々な記載形態をとっており、特に「名所図会」として分類されるものは絵師の巧みな風景描写によって当時の様子を窺い知れる貴重な史料である。本研究会はこの道中記における建築描写表現を取り上げ、絵師の建築に対する知識及び庶民の建築に対する認識の2側面から捉えることで、江戸時代に生きた人々の建築観を探究することを目的とする。